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シミュレーションに基づく鋼構造・複合構造の性能照査

研究概要

複合構造は,複数の異種材料を組み合わせることで,単一材料では得られない優れた力学的性能を引き出すことが可能な構造です。 土木分野においては鋼とコンクリートの組み合わせが一般的で,橋梁の床版など多くの構造に適用されています。 このような複合構造は,異種材料が一体となって荷重に抵抗することが前提とされており, 要求される性能を発揮するためには,設計においてこの複合構造の合成作用を適切に考慮する必要があります。


図-1 合成桁のスタッドジベル

図-2 複合構造の有限要素接触解析

従来の複合構造に関する設計指針は,スタッドジベルなどのずれ止め(図-1)による機械的抵抗により一体化を担保する方針となっていますが, 異種材料の結合部が非常に複雑な構造物の場合,ずれ止めにより作用する力が解析的に明らかでないため, 性能を照査するには数値解析を用いて数値的に力を求める必要があります。 複合構造に関する数値解析には,異種材料の一体化を担保するために,一体化を前提としない解析が必要となるため, 異なる材料の領域を別な物体としてモデル化し,それらが接触することによる力の伝達を考える接触解析が用いられます(図-2)。 また,異種材料界面は付着,摩擦,支圧といった原始的な作用により一体化が成り立っていることから, 複合構造の合理的な設計を行うためには,異種材料界面における合成作用,特に摩擦と付着の適切な考慮が重要であることがわかります。 しかし,異種材料界面に付着破壊が生じる際には構造の力のつり合いが大きく変化し,数値解の収束が困難となることから, 現状として数値解析に用いるための精度の良い材料界面モデルは確立されていません。 そこで当研究室では,付着が破壊した際に生じる過大な不つり合い力を段階的に解消することにより, 材料界面の摩擦・付着を考慮できる有限要素接触解析手法を提案しています。


図-3 異種材料界面の付着破壊を再現できる数値解析手法

また,最近では既設鋼構造物に対する耐荷性能の向上を目的として,繊維強化プラスチック素材(FRP)を鋼構造に接着させる補修・補強工法が使われています。 FRPは高弾性・高強度に加え,人力でも運搬できるほど軽量であることから,死荷重増加の抑制や施工の簡易化を期待できます。 鋼とFRPの一体化を担保するためには,FRPが鋼から剥離しないことを保証する必要がありますが,現状この剥離による終局状態は明確にされていません。 そこで当研究室では,鋼部材に接着されたFRPの剥離進展を表現できるモデルを用いた非線形有限要素解析を行い, FRPの破壊メカニズムを明らかにすることで,補修・補強効果を数値的に評価する研究を行っています。


図-4 FRP補強されたH形鋼の4点曲げ試験の再現解析

研究キーワード

複合構造,鋼,コンクリート,FRP,界面,付着,摩擦,接触解析,cohesiveモデル,臨界エネルギ解放率

研究成果

学術論文

  1. 斉木 功, 三井涼平, 横山 薫, 鈴木俊光, 橋本幹司, 相反定理に基づく有限要素モデルの修正が不要な影響線の解析, 土木学会論文集A1,土木学会,Vol.79, No.3 pp.480-489, 2022.
  2. 山田真幸,斉木 功,岩熊哲夫, 鋼コンクリート界面の付着強度評価のためのトルク型せん断試験に関する基礎的検討, 構造工学論文集,土木学会,Vol.59A, pp.37-46, 2013.
  3. 斉木 功,菊地浩貴,山田真幸,岩熊哲夫, 鋼コンクリート界面の付着強度評価法に関する一提案, 土木学会応用力学論文集,vol.13,pp.323-329, 2010.
  4. 片野俊一,斉木 功,小山 茂,岩熊哲夫, ハイブリッド複合材料のはく離を考慮した有限要素の開発, 土木学会応用力学論文集,Vol.12, pp.299-310, 2009.
  5. グエン デュイ シン, 斉木 功,岩熊哲夫, 解析的平均化手法に界面剥離を組み込んだ複合材料要素, 土木学会応用力学論文集,Vol.10, pp.415-423, 2007.
  6. 井上 淳,中島章典,斉木 功, 鋼板貫通鉄筋を有する複合構造剛結部の力学性状に関する実験と数値解析, 土木学会構造工学論文集,Vol.53A, pp.1077-1088, 2007.

学位論文

  1. 三井涼平,相反定理に基づく効率的な影響線の有限要素解析手法の提案と鋼床版の疲労寿命評価への適用,修士論文,2022.
  2. 笠原華子,CFRPによる鋼桁の補修・補強効果の数値的評価に関する一考察,修士論文,2021.
  3. 大高淳文,要素試験による鋼コンクリート界面の付着強度および臨界エネルギ解放率の評価に関する一考察,卒業論文,2020.
  4. 笠原華子,CFRP補強された鋼桁の曲げ終局メカニズムに関する一考察,卒業論文,2019.
  5. 高橋一生,FRPによる鋼部材補強効果の数値的評価に関する基礎的検討,修士論文,2018.
  6. 高橋一生,界面の付着破壊を考慮した鋼コンクリート複合構造の性能照査の試み,卒業論文,2016.
  7. 黒澤明史,材料界面の摩擦・付着を考慮した合成部材のせん断特性評価,修士論文,2014.
  8. 瀬戸川敦,合成部材の非線形せん断特性の数値的評価,修士論文,2013.
  9. 鑓一彰,鋼コンクリート界面における接触を考慮した合成桁の数値的性能評価,修士論文,2012.
  10. 黒澤明史,実用的な防錆処理が鋼コンクリート界面の付着・摩擦特性に与える影響に関する基礎的検討,卒業論文,2012.
  11. 桐木真也,界面剥離を考慮した解析的平均化手法によるFRP梁の曲げ試験挙動とその強度予測,修士論文,2010.
  12. 菊池浩貴,鋼コンクリート複合構造の性能評価のための付着力評価,修士論文,2009.
  13. 片野俊一,ハイブリッド複合材料のはく離を考慮した設計ツールの開発,修士論文,2008.
  14. 田中光,鋼コンクリート複合構造に用いられるずれ止めの数値的性能評価,修士論文,2008.
  15. 秋元秀之,鋼コンクリート界面の付着力評価に関する基礎的検討,卒業論文,2008.
  16. 荒木真隆,複合構造の有限要素接触解析における界面のモデル化に関する一考察,卒業論文,2007.
  17. 戸塚祐,鋼・コンクリート界面の付着および摩擦の評価,修士論文,2006.
  18. 田中光,複合構造の有限要素接触解析における付着・摩擦則のモデル化に関する一考察,卒業論文,2006.

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